仙台市の48市有施設が消防法で定める非常用自家発電設備の負荷試験をしていなかった問題で、一部施設では法令違反の状態が複数年にわたることが14日、分かった。十分な知識を有する点検業者が少ないことなどが背景にある。負荷試験の意義が共有されず、法律が空文化していた可能性が大きい。
各施設が消防署に年1回提出する消防用設備の総合点検報告書類によると、青葉区の折立市民センターと若林区の急患センター、中央卸売市場の3施設は少なくとも2016、17年と2年連続で、試験をしていなかった。
試験では発電能力の30%を目安に発電機を回す必要があるが、急患センターは17年の報告書類に、回転数を上げずに点検を行ったことを意味する「無負荷」と記載。16年は負荷試験の確認欄に斜線を引いて済ませていた。
センターを管理する市救急医療事業団は「過去に指導を受けたことはなく、6月の市消防局の説明会で聞いて初めて(試験実施に向け)動きだした。近々試験をしたいが、ノウハウを持つ業者が少ない」と話す。
センターの発電設備を点検した青葉区の業者は、建物を停電させた上で自家発電で消火ポンプなどを動かす「実負荷」と呼ばれる負荷試験について「医療施設は電気を止めると命に関わり、こちらからは実施を求められない」と弁明した。
この業者は、発電設備に点検装置をつなぎ電流・電圧を確認する別の試験方法の「疑似負荷」に関し「配線をつなぎ換える間は(電気が使えない)リスクがある」と説明。一方で「停電させずに疑似負荷試験をする技術はある」(若林区の業者)との指摘もある。
市消防局は各施設への指導を強化し、今後は点検業者の団体に対し情報提供もする。高橋正裕予防課長は「負荷試験は火災時に発電設備のエンストを防ぐなどの意味がある。必要性を粘り強く周知したい」と述べた。