【解説】仙台市有施設の負荷試験未実施問題は市が全庁的な対応に方針転換し、解消に向け動きだした。消防用設備の点検は利用者の安全に直結する。市は、完全性が求められる安全に対しあまりに無自覚ではなかったか。
 まず問われるべきなのは施設や点検業者に対する消防署の指導不足だ。試験を複数年実施しない施設もあり「確認は形だけ」と言われても仕方ない。
 必要書類が不足しているのに消防署は複数施設の報告を受け付けた。「書類の分量が多く見落とした」と釈明するが、市の他の窓口で同じことがまかり通るとは思えない。消防署の「緩さ」が際立つ。
 施設側も点検業者に任せきりで利用者を守る当事者意識に欠けた。「無負荷試験でいいと言われた」と業者の言い分を丸のみにしていた施設もあった。
 青葉区の折立市民センターなど一部施設で、発電機のエンジンがかからないなど重大な不具合が1年以上続く状況も看過できない。
 施設側は「予算要求に間に合わなかった」と弁明するが、行政の理屈が利用者の安全に優先すると考えているなら猛省を促したい。
 今後は民間施設の点検が焦点になる。年1回の負荷試験が必要な施設は市内に約780カ所。市の粘り強い啓発と毅然とした対応が求められる。(報道部・関川洋平)

河北新報
<自家発電試験未実施>安全への無自覚 露呈」より引用