災害時に電力を賄う非常用発電機の整備不良によるトラブルが全国で相次いでいる。大阪北部地震では国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)が停電となり、非常用発電機が運用できなかった。5年以上点検していなかった。国は点検率を上げようと点検方法を見直したばかりだが、効果に疑問の声も上がる。

 6月18日朝、震度5強を記録した吹田市。大きな揺れに襲われた同センターの中央管理室に緊張が走った。電力状況を確認するパネルが、停電で自動的に切り替わるはずの非常用電源を表示しなかった。担当者が慌てて発電機まで走って手動で切り替えた。だが今度は送電ができなかった。結局、停電が復旧するまでの約3時間、人工呼吸器など患者の生命にも関わる電力の供給を緊急用のバッテリーを使ってしのいだ。停電を受け、一部の患者は別の病院に転院させた。
 その後の調査でパネルの不具合や送電線のショートが見つかり、センターは少なくとも5年間、点検や試運転をしていなかったと発表した。
 学校や事業所、店舗など、一定の人の出入りがある場所は法令で非常用発電機の設置と点検が義務付けられている。点検は年に1度、施設を全面停電させた上で起動し、実際にスプリンクラーなどが動くか確認するか、専用の装置を使って低出力で試運転して性能を確認する必要がある。
 日本内燃力発電設備協会によると、防災用の非常用発電機は国内に約25万台あり、2011年の東日本大震災時には東北地方の約4800台のうち、津波の影響を除くと209台が作動しなかった。16年の熊本地震でも104台のうち13台が動かず、多くは整備不良が原因とみられている。
 相次ぐトラブルを受け総務省消防庁は6月1日、関係法令を改正。発電機を分解して内部の部品を点検することで、試運転に代えることを認めた。この見直しについて非常用発電機管理「アステックス」(東京)の担当者は「点検のハードルを下げただけで、効果的な方法とは言えない」と指摘。「発電機が集中する都市部での大規模地震に備え、むしろ点検内容を強化することが必要だ」と訴える。

毎日新聞
大阪北部地震 非常用発電、機能せず 国循、一部患者が転院 整備不良、東日本や熊本でも」より引用