【東日本大震災では被害の拡大要因に】
災害などの停電時に、非常用消火設備や非常用消火栓、あるいはエレベーターなどを動かすために非常用発電機が使われます。
例えば医療機関等では、停電中も医療を継続するためには絶対的に電気は欠かせません。
そのため、1000平方メートル以上の多くの施設では非常用発電機の設置が義務付けられています。
残念ながら、2011年の東日本大震災においては、それらの非常用発電機の多くが作動せずに、震災による被害を拡大する一因にもなりました。
例えば、津波で流されたものを除き、整備不良によって作動しなかった非常用発電機が全体の41%を占め、始動したものの途中で異常停止したものが27%もあったとのことです。
少なくとも4割以上の非常用発電機が整備不良によって作動しなかったことから、防災機器のメンテナンスを怠ってはならないことの重要性を改めて痛感いたします。【消防法で義務付けられた「負荷運転試験」】
非常用発電機については、消防法17条の3の3の規定により、年に一回、施設全館を停電させた上で非常用発電機に切り替えて、スプリンクラーなどがきちんと作動するのかどうか確認することが義務付けられています。
とはいえ、テナントが入居する商業ビルや病院などで全館停電させることは困難であるために、非常用発電機に30%以上の負荷をかけて正常に作動するかを確認する「負荷運転」による検査も認められているのですが、おそらくは東日本大震災で作動しなかった非常用発電機は、負荷運転すらも行われていなかった可能性が大です。【多摩区役所では実施されておらず】
そこで私は、川崎市における負荷運転試験の実施状況を確認すべく、過日に開かれた予算審査特別委員会で質疑に立ちました。
市内には、非常用発電機の負荷運転試験を義務付けられている施設が610棟あります。そのうち、区役所、市立病院、福祉施設など川崎市が管理する施設は31施設34棟です。
そこで、市が管理する31施設34棟の負荷運転試験の実施状況について質問したところ、残念ながら区役所で1施設、福祉施設では9施設において実施されていなかったことが判明しました。因みに、未実施だった区役所というのは多摩区役所です。
驚いたことに、未実施だった施設では、点検そのものの趣旨が正しく理解されておらず、なんと負荷運転試験が点検範囲から漏れていた、というケースがありました。
要するに、なぜ負荷運転試験が必要なのか、という点検の趣旨が広く周知されていないことが問題の根底にあるようです。【ガイドラインの策定を提言】
一方、点検を請け負う業者の中には、本当はその能力を有していないにも関わらず、「低価格で負荷試験を行うことができます」と謳って、施主や業者に近づいて利益を貪っている悪質な業者が存在していることも見逃せません。
当然のことながら、点検にあたっては非常用発電機にリスクをかけることになりますので、万が一のリスクを考慮し、より安全に特化した点検を行っていく必要性があります。
そのためにも、点検を実施するにあたっては、例えば第三者機関等によって安全性が確認されている負荷装置の使用を徹底させるなどの行政的な指導が必要です。
予算審査特別委員会では、点検の周知徹底と合わせ、点検時のリスクを低減させるため、川崎市独自のガイドラインを早急に策定すべきことを提言させて頂きました。
タウンニュース多摩区版
市政報告 「非常用発電機の負荷試験 多摩区役所、実施されておらず川崎市の防災安全保障を問う」より引用