◆(安井つとむ議員)(中略)次に,消防行政について質問いたします。日頃,京都市消防局が果たされております役割に対し,市民生活の中では信頼高く評価されています。未曾有の被害をもたらしました阪神・淡路大震災に続き東日本大震災から6年半,あの甚大な被害を受けた被災地では,復興が進んだとはいえ,いまだにその傷跡を残す光景が残り,市民生活に影響を与えていることがマスコミを通じて私たちにも伝わっております。その後,熊本地震,そして地球温暖化による気象,気候変動により,毎年続く集中豪雨による被害等は全国にわたり,日々の安心安全が揺らいでいく様子が日常茶飯事のごとく続いており,何が起こるか分からないことを実感しております。
 一つ,非常用電源を備える施設といえど,その例外ではなく影響を受けております。特に,災害時の停電時に消火設備やエレベーター等を動かすために整備されている非常用発電機。本市におきましては,国内外から訪れる観光客の災害時の対策と共に帰宅困難者への訓練も重要課題として実施されております。しかし,ホテルラッシュによる建物の日々の増加も目を見張るものはあります。災害時に既存の建物に設置されているその多くの非常用発電機が正常に作動するのかどうか,そのための日々の点検は規定どおり実施され,万が一の時に安全が確保できるかどうかが今問われております。
 本市ではありませんけれども,事例として,今年2月ある商業施設で非常用発電機を点検した際の出来事でありますが,稼働試験を実施したとき,スイッチを入れると同時にエンジンをスタート,そしてごう音と共に周り一帯に煙が立ち込めたということで,点検作業員が避難したことも報告されております。
 御存じのように,非常用発電機とは,地震や停電など災害時に,スプリンクラー,消火栓ポンプ,エレベーターを作動させるための設備で,特に病院や公共施設,劇場,商業施設など人が多く集まる施設で延べ床面積が1,000平方メートル以上の建物には設置が義務付けられています。しかし,設置されても適正な点検をしていないと,排気管や排煙機器にたまった燃料やカーボン等が初動時に燃え煙が出たり,時には火が付くといったことも想定され,必要なときに作動しない発電機が存在しているのが現実と言われております。当該施設業界の関係者は,全国においても多くの非常用発電機の正常な点検を疑問視しております。万が一の非常時に稼働しない可能性を示唆しております。今後,大きな地震が発生することを心掛ければ,日常から正確な点検をすることの必要性がうたわれています。
 非常用発電機の点検については,年に1回施設全体を停電させ,非常用に切り替え,そしてスプリンクラー等が正常に作動するかを確認することを義務付けています。とはいえ,テナント入居者や病院などで全館停電は非常に難しいため30パーセント以上の負荷を掛け,非常用発電機が正常に稼働するかどうか負荷運転による点検において確認するとともに,その点検をしたうえで,各施設のオーナーは,負荷運転の実施の有無や内容を記入いたしまして,非常用電源点検票を管轄の消防署に提出することになっております。これも義務付けられております。
 大阪市のホテル,商業ビル,病院,介護施設及び公共施設を対象として情報公開請求をされた情報によると,460施設の非常用電源点検票を入手し,そして適切な点検の実施が行われているかチェックし,その結果として負荷運転が実施されている施設は211で,割合にし45.87パーセント。半数以上は電源を入れただけの無意味な無負荷運転を含み,負荷運転が行われていないことが分かったわけであります。防災関係者が出向いて確認しても実際には実施していない施設もあり,問合せによると「面倒なので実施したことにして提出する」,また,「今後は適正な点検を報告する」と返答されたものもあったとされております。なぜならばこの点検には多くの経費が掛かることもあるからです。
 消防法では,虚偽報告は30万円以下の罰金が科せられる中,消防庁も点検を施していない施設はそのように多くないと言いつつも,各地の消防局は点検票を受け取るだけで精査せず直接点検に立ち会うことがないとも言われております。本市におきましてはどういった状況なのかお尋ねしたいと思います。
 本市での状況については,市民の方の情報公開制度に基づき得た資料によりますと,本市上京区内の特定消火対象物で延べ床面積1,000平方メートル以上の建物における非常用発電機設置に伴う点検実態を見ると,情報公開された9施設の事業者から提出された点検票の写しを見ますと,機械装置の内容が記載されていないもの,また負荷運転をせず無負荷運転で済ませたり,稼働試験の有無も記載されていないことが判明いたしました。非常用発電機の電源はいつも正常に作動する,消防法令により年1回負荷を掛けた運転試験による点検試験が義務付けられています。災害時に被害を最小限にとどめるための重要な役割を担う非常電源に関する本市全域における該当施設の状況と共に,消防法上の法定点検実施状況についても答弁を求めます。また,法定点検がなされていない場合はどのような指導をされてきたのか,併せて答弁を求めます。

(中略)

◆(大津裕太議員) 続いて,防災,防火,危機対応に関してでございます。自治体には様々な役割がございますが,市民の命と財産を守ることは最も大切な役割です。本市も,ロックフェラー財団が創設した100のレジリエント・シティに選定され,災害や混乱に強い都市を目指し,世界最高水準の危機事象への対応を加速させております。先日,藤田統括監からレジリエント・シティについての話を聞く機会を得ました。防災にとどまらず,いかに復旧するか,いかに以前より強靭なまちにするかという取組には大いに期待するところであります。
 そこで本市の防火,防災,危機対応において足下で不安を感じる点を2点指摘いたします。1点目は,先ほど民進党の安井議員からも指摘がありました非常用発電機の点検についてでございます。非常用発電機とは,災害時に停電した際に,スプリンクラーや非常用消火栓,非常用電源,非常灯など人命に関わる設備に電気を供給する予備電源であり,二次災害を防ぐ防災の要でございます。また,医療機関等では,停電中も医療を継続するために欠かせません。そのため,1,000平方メートル以上の多くの施設では非常用発電機の設置が義務付けられております。しかし,阪神・淡路大震災では約4分の1の非常用発電機が始動しなかったことが確認されております。そして火災被害が拡大いたしました。東日本大震災や熊本地震でも同程度の発電機が始動しませんでした。また,始動しないだけでなく,発電機自体が発火し火災の原因となったケースもございます。これらの要因の約3分の2が点検不備と言われております。
 非常用発電機の点検は消防法により,年1回定格出力の30パーセント以上の負荷を掛けて点検することが義務付けられています。この30パーセント以上の負荷というのは,自動車でいうところのエンジンの始動と停止だけの空ぶかしだけではなく,アクセルを踏み実際に走らせることを意味します。エンジンの空ぶかしや低い負荷での点検は,未燃焼燃料やカーボンがたまり,故障や発火の原因となります。
 しかし,残念ながら法定ルールでの点検が全国的に官民問わず多くの施設で行われておりません。本市の施設でも,区役所や文化施設,教育施設など複数の施設で確認をいたしましたが,ほぼ全ての施設で点検不備がございました。点検報告書は消防局に提出されますが,適切な記載がされないまま,消防局としてもチェックがしっかりできていません。点検不備が起こる理由は,正しい点検方法の認識がなかったという知識の問題もありますが,非常用電源の発電のためには停電が必要で,長時間の停電が困難であることや,実際の設備では負荷が大きく掛からず,30パーセント以上の負荷を掛けることが困難という技術的な原因もあります。しかしこの場合,模擬負荷試験装置を使って点検をすることができます。停電を必要とせず,強い負荷を掛けることができます。しかし,従前の模擬負荷試験装置は装置が非常に大きく,スペースの問題がありました。また,運搬や操作に多くの作業員を要し費用が高額という問題もございます。しかし,近年は技術も進み,2メートル四方の小型模擬負荷試験装置が開発され,スペースや高コストの問題もクリアされております。さらに,発電機のメーカーは,法定の30パーセント以上の負荷では不十分であり,できれば100パーセントの負荷を掛けることが望ましいとしております。また,100パーセントの負荷を掛けることで発電機の寿命が延びることも分かっております。模擬負荷試験装置では,30パーセントの負荷でも100パーセントの負荷でも労力もコストも変わりません。
 そこで市長に提案いたします。行政は,民間の手本となるべく率先垂範すべき立場です。災害時の二次被害を防ぎ,市民の命と財産を守るためにも,本市の施設においては,法定の点検はもとより100パーセントの負荷を掛けた非常用発電機の点検の徹底をしていただきたいと思います。9月1日は防災の日ですが,例えば防災の日に一斉に点検されるのはいかがでしょうか。また,消防局においては,官民問わず指導を徹底し,早期に京都市内の全ての非常用発電機が適正な点検が実施されることを求めます。

(中略)

◎消防局長(荒木俊晴) 非常用発電機の点検についてでございます。消防法において,一定規模以上の建物所有者等は,自家発電設備を設置すること及び定期的に点検報告を行うことが義務付けられています。この点検のうち発電能力を確認する負荷運転については,国の告示により実施しなければならないこととされております。本市では,提出された報告書により,負荷運転が実施されていないことを把握した場合は,建物所有者等に対し国が定めた点検方法により実施するよう粘り強く丁寧に指導を行ってきた結果,再度点検し,報告書が提出された事例も認められています。しかし,自家発電設備の負荷運転を実施する場合には,全館停電を行うか,又は多額の費用を要する停電させない検査方法となることから,施設にとってはいずれの場合も負担が大きく,全国的にも低調な状況となっています。こうした中,現在,総務省消防庁の消防用設備等点検報告制度のあり方に関する検討部会において,負担の少ない点検方法についての検討が進められているところです。国の検討結果を見極めながら,引き続き,本市の施設はもとより官民を間わず建物の所有者等に対し施設の実態に応じた負荷の強さなど負荷運転の方法について丁寧に指導してまいります。なお,負荷運転の実施時期については,その促進の観点からも,施設の業務の実情に応じ,対応しやすい日に行っていただくよう周知を図ってまいります。以上でございます。

平成29年度京都市議会 総務消防委員会 定例会より該当箇所のみ抜粋